6月10日のPHPカンファレンス福岡2017で、「下さい」と「ください」の使い分けに関する発表があったようだ。発表は聞いていないが、Twitterでの反応から察するに、「入力して下さい」と書くのは誤りであるとの意見だったらしい。
誤りとする理由は、「下さい」だと英語のgiveにあたるから、というものだ。pleaseの意味なら「ください」と書くのが正しいというわけだ。
しかし、この理由はおかしい。歴史的には、どちらの用途にも使われる「ください」という和語がもともとあって、のちに漢字の「下」があてられたはずだからだ。giveもpleaseも同じ「ください」なのだから、どちらか一方のみを漢字で書くべきという話にはならない。
もちろん、それでも「入力して下さい」は「入力してください」と開くべきだという意見はありえる。たとえば新聞社が読みやすさを追求して、自前のガイドラインを設けて「入力してください」のみを許容することはあっても不思議ではない。
ただ、要は好みの問題なのだから、「入力して下さい」は誤りだとまでいうのは言い過ぎだろう。少なくともぼくは従う気はない。ご了承下さい。
冒頭の発表資料には、貝島良太氏の「「下さい」と「ください」を正しく使い分けていますか?」(PDF)が参考資料として挙げられている。この資料がgive/pleaseの話の出どころのようだ。貝島氏はこう書いている。
そこで、筆者は次のように簡単な使い分け規則を考案した。
「クダサイ」の本動詞としての意味は、物のやり取りに関するもので、英語の give に相当するといえる。いっぽう、補助動詞として丁寧な意味を込める場合は英語の please に相当するといえる。これを漢字と平仮名で使い分けようというものである。
結局、貝島氏が自身の規則として考えた使い分けが独り歩きして、あたかも誰もが守るべきルールであるかのように扱われているだけなのだ。タイトルの「正しく使い分けていますか?」を鵜呑みにした人が多いのかもしれない。